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NO.6 “アクアテール”

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「…………もーヤダ。いくらなんだって、もーいい加減にムリ」

 真夏の象徴たる白い太陽が照りつける下、薄手の学生服に身を包んだ少女が、汗を滴らせ息を絶え絶えにさせ、言葉を吐いた。
 彼女が立つのは、青く大きな直方体の窪み。今はわずかにその底面に残るだけだが、この場所が機能しているときには透き通った水が潤沢に満たされているもの――つまるところ、少女の通う学校に備え付けられた屋外のプールである。
 彼女の疲労した身を支えるのは、その両手で抱かれた一本のデッキブラシ。自分ひとりでこの広大な空間を清掃している現状と、掃除を済ませなければ現状が終わらないという状況を改めて確認し、少女の溜息は一層深みを増す。

「罰ったって、フツーはトイレくらいでしょ……なんなのプールって。ちっとも面白くないんだけど……」

 誰に言うでもなく、ひとりごちる声が清掃途中のプールに落ちる。確かに校則違反は行ったが、しかも幾度にも渡ってやらかしたが、だからといって一人でプールの清掃というペナルティは流石に自分の予想も限界も超えている、と少女は思う。
 ブラシを支えに見渡せば、辺りに広がるのはあまりに大きな青の床。その中で自分がブラシを走らせた面積はまだほんの一角であるという事実を知り、曲がる細い背がさらに深く雪崩れていく。
 せめて自分の体が大きければ、多少は楽だったのだろうかと、そうした考えに至った時、はっと少女はプールサイドに目を向けた。
 そこに置かれているのは、自らの荷物だ。太陽の光を浴びてすっかり熱を持っているであろうスクールバッグがあり、その横には大判のタオルが置かれていた。
 そのタオルの上に、赤と白の二色の球体が、三つばかり載せられている。
 少女は、その球体に吸い寄せられるよう、ふらふらとした足取りで炎天下のプールを横切る。たっぷりと時間を要して自分の荷物の所へと戻った彼女は、疲労のあまりデッキブラシから手を離してしまい、しかし空いた両手のうち、左手でプールサイドを、そして右手で二色の球を――モンスターボールを、確かに掴んだ。
 照りつける日光のごとく目を爛々と輝かせ、彼女は今出すことのできる全力を注ぎ、ボールを投じた。同時に、叫ぶ。


「――ギャラドス! “アクアテール”っ!!」

 一瞬の間を置き、少女の言葉は果たされることとなる。
 宙を舞ったボールから青白い光が発せられ、一気に膨らんでいく。
 それが長く大きなひとつの姿を取ったとき、光を割るような咆哮が響き渡った。
 夏の空に現れたのは、大蛇のようでも、魚のようでもある巨体だ。
 だがその身を包む青い鱗と、威圧の力を湛えた双眸は、巨体を形容するに相応しい別の言葉を求めているようであった。
 間を置かずに天へと昇り始める、その体躯。その姿は紛れようもなく、一匹の龍の飛翔である。
 海の青に染まった龍は、上昇の軌道をとってから、不意にその向かう先を変えた。
 その動きは、落ちるものであり、そして巨体自体に生じているのは、大きな縦回転の動作だった。
 それなりの高度を取っていた龍だが、しかし落ちる動きが添えられた回転は、一度もそれを果たすことなく、その中途で止められる、そんな動きだ。
 しかし、それで少女の言葉は果たされる。回転して落ちる青龍は、回転動作の中でその身の一点に光を集めていた。
 長大な一本の体の、頭と逆の位置。ヒレを持ったその場所は、ひとつの大きな尾だ。
 回転し、尾が内側に入り込むようにした状態で、この巨躯が泳ぐにはあまりに小さな水槽の底面へと叩き付けられる。
 直後、そこで爆発が生じた。
 といっても、爆ぜたのは爆炎でも瓦礫でもなく――巨体の尾から生まれた、新たな水の塊だった。
 飛沫の音が重なり、尾から波紋が広がる。そこで生じた多量の水は、そして龍が放った衝撃は、清潔を欲していた青い水槽から、確かにその汚れを吹き払っていた。
 波が砕けるような音と、滝の際に立つような水しぶきを受ける場所で、少女はその事実を見てとっていた。同時、水を得た体が牢獄から開放されたような清涼感を持つのを感じ、自然と彼女の顔が綻ぶ。
 
「やったっ! 作戦成功じゃない! うわ私天才だ、これならもう速効で終わる…………って、どったの、ギャラドス?」

 喜びに浸る少女の目線の先、青い巨体が自らの主人へと目線を送っていた。一見すると逃げ出したくなるようなその鋭い目の形の中に、なにか自分に伝えたいことがある様子を、トレーナーである少女は確かに感じ取る。
 少女の声を受けた水の龍は、その目を下に向ける。つられて少女も目線を落とすと、

「げっ……」

 思わずそう声が漏れた、その原因がある箇所。
 巨体の尾が衝突したそこに、小さく細かく、しかし確かに、一筋のヒビが刻まれていた。


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◇ひとこと
またもや、大学で時間が空いたので更新です。今回は、プチストーリー仕立てでもないですが、なんだか長くなってしました。
アクアテールのエフェクトって、水がバシャーンって広がりますよね。あれがなんか涼しそうだったので、攻撃以外に使ってみようと思って考えたのが今回でした。攻撃しちゃってましたが。
ポケモンの水ワザって、どこから水を持ってきてるのかよくわかりませんよね。そのへんもこれからのワザでいろいろやっていこうと思うので、適度にご期待ください。適度に。
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テーマ : ポケットモンスターHG・SS
ジャンル : ゲーム

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プロフィール

Author:ぱすてぃ
ポケモンと百合に熱を注いでいる人です。当面の目標はオリトレの百合長編を書くことですがいつになるやら。

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