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NO.66 “おんがえし”

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「さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい、文句だったら一目見てから言いにらっしゃい! すっごいパワー見せちゃうよーっ!」

 この町の広場ってのは面白いもんで、毎日何かしらのパフォーマンスに興じるトレーナーと、それを見物にくる連中で賑わっている。今日の目玉は、小さいくせに威勢よく声を張ってる女の子と、その横で寝っころがっているカビゴンらしい。
 たまにはこんなのも悪くないかと思い、団を作っている人の中にオレも入っていくことにする。近づいて分かったが、なるほど、よく鍛えられたカビゴンだった。手足と体が太いのは当然なんだが、その身が硬そうに見えるとなると、そうお目にかかれるものじゃない。

「ではでは! えー、ここにそびえ立ちますは、見るも圧巻の大巨岩! この前ここに来た旅芸人のドサイドンが作っていったとか聞いたけど、とにかく私が二十人は縦に並ぼうかというこの大きさ、邪魔で仕方がないと聞いたわけです! そこでこの岩、私のかわいいカビゴンが腕の一振りで粉々にしてご覧に入れましょう!」

 パフォーマンスの内容としてはシンプルすぎるぐらいシンプルだったが、なんにしても視界にまず飛び込んでくるような、あるのが当たり前にすら思えてくる巨岩なわけで、スケールの大きさがウケたのか、意外にも観衆の反応は良さげで、そこかしこで囃し立てるような声援や、壊せるか壊せないかで賭けに興じ始める声が飛び交った。オレもまた、事の顛末に期待が過ぎりはじめる。

「こほん、では早速」

 わざとらしく咳払いをして見せてから、女の子はカビゴンを振り仰ぐ。大岩のすぐ側で重たい体を座らせているそのポケモンに、一息置いた女の子はいざとばかりに声を張り上げた。

「カビゴンっ、“おんがえし”!!」

 カビゴンが重く、岩の側である右の腕を振り上げ、そこに白く強い光が――溜まりそうになったと思ったらすぐに止まって、そのまま腕が岩に向かって落ちた。ずいぶん力なく。
 乗ってたエネルギーが貧弱だった上に腕もただ落としただけだから、まあ、結果は、言わずとも明らかだろう。数秒前と何も変わらない光景が戻ってきたことで、この場の空気が、完全に凍っていた。

 その、あまりに居心地の悪い沈黙を一番に破ったのは、カビゴンと信頼しあうパートナー……であるはずの、女の子自身だった。彼女は手をばたつかせ、慌てふためく勢いで辺りを見渡しながら、

「ちょっ、あの、カビゴン、もしかしてこの前のバナナ食べちゃったのまだ根に持ってんの!? だ、だってあれ、ホントに一本だけだよ! あまり美味しそうに食べてるもんだからつい、ほら、アンタのせいなんだよっ! ってかね、これアンタの食費確保するためにやってるわけです、分かります!? ねえ、ちょっと、あ、コラ、そんな都合のいい寝入りがありますか! 逃げないでって、ねえ!」

 一言のたびに、観衆が目に見えて減っていく。オレも溜息をついて立ち去ろうとして――あんまり可哀そうだったんで、袋詰めになったポフィンをひとつ、女の子の前に置かれている空の箱めがけて投げ込んだ。


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・ひとこと

 シリアスなシーンで、ピンチのご主人のために全力で一撃を叩き込む忠義深いポケモン…………は描けませんでした。どうしてこうなった。そして長いです。
 おんがえしとかは、トレーナーへの「なつき度」によって威力が変動するわけですが、この「なつき度」に値する、ポケモンの持ちうる不思議な力、感情ってのはなんらかの形としてあるというのが、個人的な解釈です。それがどういうもので……というのは、また考えたいと思います(つまり現時点では考え不足という)。
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テーマ : ポケットモンスター
ジャンル : ゲーム

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ぱすてぃ

Author:ぱすてぃ
ポケモンと百合に熱を注いでいる人です。当面の目標はオリトレの百合長編を書くことですがいつになるやら。

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